tamasanchi

楽しく生きる方法を探し中

寒くて厳しい冬をじっと耐えた。

長い長い冬をずっと耐えた。

 

いつになったら暖かい春がやって来るのかと、私は待ち焦がれていた。

春になれば、縮こまった心や体がゆっくりと緩んで

春になれば、力を込めた心や体がゆるりと伸びて

春になれば全て上手く行くようにさえ思えた。

 

 

暖かな陽射しが雪を溶かし、暖められた土から芽を出し、渡り鳥達が去っていき春が来た。

風は落ち着き、波は穏やかになり、春が来た。

 


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陽射しが思っていたより強くて体が上手く伸びない。

急に冷え込んで体が付いていかない。

体力が無くて思っていたより動けない。

自律神経が乱れてひどく頭痛がする。

人の動きが速くて焦る。

急にぽっかり寂しくなる。

バタバタとやって来る終わりと始まりに不安になる。

自分だけがここに居るような気になる。

なんだか春に疲れてしまう。

あんなに待ち焦がれていた春なのに。

わたしは春に上手く馴染めないでいる。

 

とぼとぼと歩く。

下を向いてとぼとぼと。

しゃがんだ。

見慣れた、三枚葉の群生に出会いしゃがんだ。

まだ小さいね。

まだ赤ちゃんだね。

でも、いっぱい出てるね。

これから大きくなるんだね。

葉を広げて背を伸ばし大きくなるんだね。

端っこの、うんと小さいのも負けじと大きくなるんだろね。

一人でぶつぶつと話す。

少し遠慮がちに、なるべく優しく小さい葉に触れる。

視線を上げる。

あっ、あそこにも群生してる。

あっ、向こうにも。

 

心が暖かく満たされる。

いつのまにか顔が緩んでいる。

つくしが健やかに伸びている。

わたしも真似をして背を伸ばす。

機嫌良く伸びをする。

空が青い。

優しく青い。

空を吸い込む。

ゆっくりと小さく吐く。

 

喜んでいる。

春が来た。と、

今わたしは喜んでいる。

 

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